滑って、止まるが理想です。ところが、これが難しい。
コストを度外視すれば、超、超、滑るマウスパッドは造れます。しかし、同時に止まるを実現するのは、とても困難なことです。この難しい、止まるを考えてみたいと思います。
マウスも慣性の法則からは逃げられません。軽いマウスの方が止めるには有利。重いマウスほど止めるための運動エネルギーは多くを必要とします。マウスの操作においては『止まる』と『止める』の両方によりマウスを止めています。『止まる』はマウスパッドのサーフェースの動摩擦の大小と慣性の法則により決まると言っても大きくは間違っていないでしょう。
『止める』はどうでしょう。どのようにして、止めるための運動エネルギーを得るかだと思います。一般的には、硬いサーフェースは止め難く、柔らかいサーフェースは止めやすいでしょう。先の『止まる』との関係においてもこのことは言えます。止めるという操作においては、例外なくマウスに加重を欠ける動作が含まれています。意識的、無意識に関わらず、加重がかかっています。
この加重により、マウスパッドは歪みます。マウスが沈み込むというように表現される現象です。この時に生まれるエネルギーが『止める』に有効に働いています。柔らかいサーフェースの方が止めやすいのは、マウスパッドの歪みが大きくなるからだと考えます。
もうお気づきのように、中間コア層も大きく関係してきます。サーフェースを支える中間コア層の硬度は、『止める』に大きく影響します。歪み方は、スタビリティーにも影響を与えます。微妙な影響かもしれませんが、感じ取ることのできる差異だと考えます。
難しい課題ではありますが、『止めやすく』することはできます。そういった意味で、サフェースの硬度、中間コア層の硬度、中間コア層の構造は、マウスパッドにとって、とても重要だと思います。
反発弾性が高ければ、止めるために歪ませたマウスパッドも、その動作の終了とともに素早く元の状態に戻ります。反発弾性が小さいと、元の状態に戻るのに時間がかかります。
そういった意味では、中間コア層の剛性も大切。初動に影響します。例えば、豆腐のような剛性の低い物体の上でマウスを移動させた場合と、鉄の上でマウスを移動させた場合とでは、初動が違ってくるでしょう。剛性の低いマウスパッドの場合、マウス移動の初動において、引っ張られる、粘るような感覚が残りませんか? 結局のところ、エイミングとは、こういった微妙なことの積み重ねにより差異の生じるものだと考えています。